アブ初の非円形モデルとされているのが、アンバサダー1000と2000です。アブと言えば円形というのが当時の売りでしたので、この非円形モデルには賛否両論、喧々囂々、様々な声が上がったのです。いわゆる昔ながらのアブ派には概ね不評だったこのモデルも、その後ウルトラマグ、XLTへと脈々と続いていく訳ですが、それはまた別の話。ちなみにこの非円形モデル、シマノが1977年に発売したBMシリーズが元になっています。翌年続いて投入されたバンタムシリーズで、シマノはアブの独壇場だった市場に大旋風を巻き起こすことになるのです。

アンバサダー1000/2000がニューモデルとしてカタログに登場するのは1983年のことですが、実際には82年の初めには製造が開始されています(僕は未確認ですが、81年末からの可能性もあります)。当初からブロンズベアリング(ブッシング)とボールベアリングの両モデルが紹介され、それぞれ1000と2000の2サイズ、計4モデルが登場しています。

ボールベアリングモデルには伝統的な黒が採用されたのに較べ、ブッシングモデルにはレッドとシルバーの両方の色が存在しています。日本市場ではレッドしか販売されなかったという話もありますが、僕は未確認です。カタログ上で紹介されていなくても実際には販売されていた例が数多くありますので、両方ともに輸入されていたのではなかったでしょうか?

1000/2000のギヤ比は1:4.5と記載されていますので、分類上はハイスピードモデルになる筈です。とすればボールベアリングモデルはシルバー、ブッシングモデルはレッドであった筈で、この点でもこの頃のアンバサダーのカラーリングとモデルナンバーには混乱があるように思います。ともあれ、アンバサダー1000/2000は82年の登場から2年余りで市場から消えていく、アブとしては短命のモデルです。

さて、それではアブ初の非円形リールがどのような内部機構を持っていたのか、それをここで検証していきたいと思います。

フレームの左側から見たところ。シマノに習ったパーミングカップの採用に伴って、左サイドのスプールキャップは省略されました。またギヤ系を全て右サイドに集中させているので、レベルワインダー駆動のギヤも見当たりません。レベルワインダーの固定方式はロックプレートからEロックを使った簡略型に変り、フレームピラー(横バー)も3本しかありません。代わりに上部に取り付けられたプラスチック製のネームプレートは、両側からスクリュー止めとなっています。

右側から見ると、スプールシャフトが大きく突き出しているのが分かります。アンバサダーでは伝統的に両側で均等に回転を支える方式を取って来たのですが、これまたシマノ方式である片側偏重型へと変わっています。レベルワインダー駆動のギヤはドライブギヤと直結し、クラッチを切ると回転しなくなりました。この方式の元祖もシマノですが、ついにアブはこれに追随しなければならなくなった訳です。メカニカルプレート固定のサムノブも3本から2本に減らされており、遠心ブレーキドラムも左サイドに移されました。

ブレーキプレートとも呼ばれるメカニカルプレート、しかし遠心ブレーキドラムは最早こちら側にはありません。逆転防止爪にはストッパーが設けられ、ドラグのクリック音はしなくなってします。1500C/2500Cから流用したプラスチック製のクラッチ機構には、新設計のピニオンギヤが採用されています。メインギヤ横には、レベルワインダーを駆動するギヤが入る大きな穴が設けられています。

ドライブシャフトからギヤとワッシャーを外した所。ニューギヤとクリック音のしないドラグの採用に伴って、上部のワッシャーにも新しいサイズのものが採用されています。1975年に登場した2500Cには1本しか付いていないクラッチリターン用のピンは、1977年に2本に増やされましたが、82年からはとうとう4本へ。理屈から言えばより素早いリトリーブへの切り替えが可能な筈ですが、実際の使用においてどれほどの必要性があるのか、判断に悩む所です。より高い性能を目指すという意味では、現在使用されているようなローラーベアリングの採用が一番かもしれませんが、高価な癖にすぐに磨耗して故障するローラーベアリングの弊害に気付いている人は案外少ない気がします。

スプールキャップの中身も、とても簡略化されたものになりました。2500Cの右サイドに入っているものと同じものですが、ストッパーなどはありません。スプールキャップはメッキから黒の塗装へと変わり、他機種との共通部品になっています。中央に貼られたステッカーが、少し安っぽい感じ。

ラインキャリエージは、プラスチック部品を下から押し込むだけの簡略型になりました。これだと捻じ込む手間も省け、製造する側としては大幅なコストの削減に繋がります。金属のプレスに必要な金型はかなり高価なものですし、結構消耗が激しいのです。一方プラスチックの金型も熱湯を通す穴が縦横に必要で細工が細かいため、作るのは高価です。しかし金属のプレス型と違って消耗は激しくないので、一度設備投資すれば結構長く使うことができます。安価な大量生産にはプラスチック製品に分があることの大きな理由の一つです。