パーミッグカップが初めてアンバサダーに採用されるのは、僕が知る限り1978年の5500DAからだと思います。そしてこれ以後、徐々に他のモデルにも拡充されていきます。しかし実際にこれらパーミングカップモデルがカタログに登場するのは1981年になってからで、それ以前にはまるで存在しないかのような扱いを受けており、とても不思議な感じがします。ニューモデルと言えばメーカーサイドとしても全面的に販売促進に肩入れをするのが普通だと思うのですが、一体これはどうしたことなのでしょうか?

ちなみにアブ初の非円形リール、1000と2000が登場するのは1982年の初めですが、こちらも1982年のカタログには記載がありません。ガルシア関係のゴタゴタが背景の一端にあったことは間違いないと思いますが、ひょっとすると大胆なデザインの変更を恐れたアブ自身が、積極的な売り込みをできなくなっていたということなのかもしれません。

5000ALというのも不思議なモデルで、81年のカタログでは5600Aなど他のモデルが新型として紹介されているにもかかわらず、未だカタログには登場していません(実際には、この時期にはすでに製造が開始されていた筈です)。エビスフィッシングの85年度版カタログで新型として紹介されている5000、これと5000ALとの違いも判別不能なら、5000にもかかわらずハイスピードギヤを搭載しているという点についても、僕には理解不能です。この頃、アレほど整然としていたアブのモデル名は混乱しているとしか思えません。

さて、パーミングカップモデルが実際にはどのような進化を遂げたのか、ここではその内部を見て行きたいと思います。

フレームはインナープレートに伝統的な5000同様のアルミが使用されていますが、塗装は黒に統一されています。これはスターホイールやハンドルシャフトも同様で、デザインの統一感をもたらしています。サイドカップ中央の High Speed のステッカーに注目。文字の字体が違うのはもちろんですが、そもそも5000でハイスピードとはこれいかに?(内部ギヤには6500Aと同じものが使用されています)

ドライブシャフトの仕様がいわゆるオールドタイプと変わったことにお気付きでしょう。元々ドライブギヤを両側から挟み込むディスクブレーキの仕組みが採用されていたのですが、皮のドラグワッシャーが上下同じものになったことがわかります。メーカーサイドからすると、これで部品の共通化、つまり部品点数が1点減らせます。そのためギヤの裏側も、表面と同じように少しえぐられています。こうすることで摩擦面は広くなるので、ドラグの調節範囲も広がるという一挙両得の面があります。クリック付きのドラグはアブの大きな売りでしたが、一般の高い評価に反して、ほどなくこのクリック音の出るドラグは取り止めとなります。

ハンドルの根元がポッコリ盛り上がった右プレートは、いわゆるオールドものとそれ以後を区分する大きな境界の一つです。オールドタックルコレクターの間ではとても人気のないパーミングカップモデルですが、ハンドル根元がポッコリ盛り上がってしまった主な理由は、内部のギヤの仕様変更にあったことがご理解いただけたでしょうか。サムノブやハンドルロックナット、各種ネジもステンレス無垢に変更され、メッキの手間が省略されるにいたりました。でもヤッパリ見た目は黄色っぽいステンレスよりもクロームメッキの方がきれいですね。

このモデルの大きな特徴の一つが、脱落防止の遠心ブレーキステーです。ずっとグラスファイバーを使い続けて来たアブも、ついに日本製リールと同じようなプラスチックブレーキブロックの採用に踏み切りました。実使用に限って言えば、この脱落防止システムはとてもあり難いものです。シャフトはハンドル側が極端に長く、バランス上右側がとても重要な働きをしていることが分かります。大げさに言えば、両側で均等に回転を支えるシステムから、片方により重きを置くシステムへの転換が、日本製リールにならって採用されたと言うことができるでしょう。