飛距離を伸ばしたいというのは、非常に良く聞く要望です。特に日本製のリールを使用されていた方からは、アンバサダーになってから飛距離が全然出なくなったという話を良く聞きます。果たして本当にアンバサダーの飛距離はそんなに劣っているのでしょうか?
日本製のリールは売上を増やすために最も安直な方法を見つけました。それは釣具店の店頭で皆さんがリールを手にとって見た時に、みんなが試してみること、つまりフリーにしたスプールを指ではじいて見せて、どのくらい良くスプールが回るかを確かめてみる、という事実をメーカーが良く認識することから始まったのです。この点で最高の性能を目指した日本製リールは、確かに指ではじいて見せた時、驚嘆すべき回転性能を誇示して見せます。
ですからこの驚異の回転性能を目にした人が、回転の重ったるいアンバサダーの遠投性能をはるかに劣るものとして理解するのは、無理もないことです。しかし回転が極端に良いということは、一面でバックラッシュもしやすくなるという事です。バックラッシュを防ぐためにはブレーキをある程度締めつけた状態で使用することを意味し、この状態では正直言ってそれほど両者の回転性能に差が出ているとは思えません。
実際、世界のキャスティングトーナメントでは、未だに半世紀前のアブのリールが使用され、しかも首位を取ったりしているのです。競技として厳しい競争を要求されるトーナメントでは、実使用面での性能が全てです。ですから日本製リールが誇示しているほどの回転性能が本当に遠投競技に生かせているものならば、とっくにトーナメントでの使用リールは日本製で独占されているということになります。それが事実と異なるのはどうしてでしょうか?
つまりは残念ながら、未だにスペックや目に見える性能面だけをクローズアップして見せるだけのリールでは、トーナメントの競争には勝てないと言うことではないでしょうか?見かけのハデさと実際の使用感とは一致しない良い例だと思います。アンタレスを使っている人が、「確かにスゴイリールだが、残念ながら俺には使いこなせない。」という悲しい結果になることの多いのはそのためです。
ベイトリールのキャストの要諦はバランスに付きます。つまり飛んでいくルアーのスピードと、スプールの回転、竿の反発力とスピード、キャスティングの仕方、糸の性質・太さとガイドとの摩擦、空気抵抗、これらが深く関わって飛距離が決定されるのです。飛んでいくルアーのスピードとスプールから出て行く糸のスピードが完全に釣り合った場合、これが飽くまで理想の状態なのです。ですからスプールがどんなに軽く回転してくれても、肝心のスプールから出て行く糸のスピードとの釣り合いが取れていなくては、意味がありません。良すぎる回転は余計なブレーキを要し、余計なブレーキはかえって飛距離を妨げ、バックラッシュの危険のみを増やしていることが多いのです。
むしろ日本製に比べてのアンバサダーの弱点は、真鍮素材の多用から来るその重量と、そして現在となっては少し大きすぎるそのサイズの方にあると考えるのは、間違った見方でしょうか?