
キャンプにまつわる思い出の品について
このページでは、俺が今までに使用した来た道具の内、特に印象深いものを取り上げていきたい。
思い出深い品というのは、つまりはキャンプにおいて出くわした諸々の体験とその思い出から想起される訳なのだが、俺が先ず第一に取り上げたいのはオプチマスの8Rである。コイツはご存知の通り、小型のタンクとバーナー部分がスッポリ弁当箱型のブリキケースに収納可能というもので、スベア123Rと並んで小型ストーブの代名詞的存在として知られている。俺がこのストーブを選んだのは、こいつが俺のはじめて出会ったキャンプストーブであるからだ。釣り研の合宿では常にコイツがゴーッという力強い音を立てて働いてくれ、寒くて寝袋から出るのも億劫な朝など、なんとも言えない安心感とまどろみを与えてくれたものである。コイツの良いところは当然ケースにきっちり収まってくれるその収納性の良さにあるのだが、実際には真四角のその形というのはあまりザックの中ではすわりがよくないのだ。またコイツの致命的な点は、日本人における主食、つまり炊飯を行う際に、ケースの中に滴り落ちた水滴が溜まってしまう点であり、放っておくとケース内部がサビサビになってしまうのだった。そしてストーブの構造上、大きな調理器具を使うこともできない。なぜなら鍋の底がタンクを蔽ってしまうので、タンクが徐々に過熱してしまい、ボゥッという音と共にフィラーキャップ上に設けられた安全弁からゴジラが火を吹くという事態に陥るからだ。しかしやはりその携帯性と安定した火力、とろ火調節が容易なことなどは、今もってトップバッターを努めるにふさわしいと思うのである。
2番手の登場はホープ製の真四角のクッカーである。見た通り、なんということもないただのアルミ製クッカーだ。このクッカーは俺が釣り研に入部した時、春の新人合宿で入部祝いとして先輩たちから贈られたものである。俺達新人はこの席で徹底的に先輩たちから酒を飲むことを強要され、グデングデンに酔い潰されて、例外なくゲロの海に沈んでいったのである。朝目覚めた時、誰のものともわからぬゲロでバリバリに固まった頭をした俺達の姿を、俺は今でも鮮烈に思い出すことができるのである。特に俺が当たったのはたっぷり酒が注げるこのクッカーだったので、俺は中に並々と注がれた酒を死ぬ思いで一気飲みして、早々とグロッキーしてしまったのだった。もちろん翌日の釣行は千鳥足も良いところで、とても初釣果を上げるどころではなかった。以来様々なクッカーやコッフェルを使用して来たが、なぜかこのクッカーだけが壊れることもなくしぶとく生き残り、未だに俺の現役ギヤの一つである。
次に挙げたいのはマナスルの石油ストーブである。コイツは大型のタンク容量1000ccタイプで、品番は126だ。未だに故障知らずで働いてくれる、とても頼もしい奴なのである。実はこれを買うに当たっては、一つのエピソードがあった。当時から常に金に不自由していた俺は、ショップでオプチマスとマナスルをさんざ見比べた挙句、どちらにすべきか迷って師匠の意見をわざわざ拝聴に行ったのである。俺としてはオプチマスのストーブが元々のオリジナルであるというこだわりがあり、少しくらい価格が張ってもやはりそちらが欲しいという気持ちが強かったのだ。したがって気持ちはオプチマスに傾いていたのだが、いちおうそれに対する師匠の意見を聞きに行ったという訳である。しかし師匠の意見は明快だった。「日本製のコピー能力というのは、中々バカにできないものなのだよ。お前は金が余りないのだから、ブランド名などより実を取りなさい。」というものだった。そして燃料入れ替えの手間を少しでも省くため、小型よりも大型のものを買うことを勧められた俺は、迷わずそのアドバイスに従うことにしたのである。その結果は、一言で言うと大正解だった!俺がその事を痛感したのは後にオプチマスの本物を入手してからで、そのストーブは新品であるにもかかわらず圧漏れしてトラブルが続出し、一度も使用することがないまま押入れ深く眠ることになった。その時つくづく日本製は故障が少ないことを痛感させられたのである。オプチマスのストーブを使われた方の半分は、新品の時に何らかのトラブルに見舞われた経験があるのではなかろうか?かのストーブは確かに素晴らしいコンセプトの元に作られているのだが、その品質管理のずさんさには、時としてガッカリさせられることも多いのである。マナスルはそんな諸々の教訓を俺に教えてくれた先生のような存在である。ケロシンのストーブは常に着火時に余熱が必要だし、時として鍋の底が煤で真っ黒になってしまう。それに燃料も手に付くと匂いがきつくて取り扱いが厄介だが、なにより構造がシンプルなところが良い。特に雪山など寒い地域では、白ガソリン燃料のストーブより灯油燃料の方が適しているのだ。なぜなら揮発性が低く、より持続的な燃焼が期待できるからで、高空を飛ぶジェット機の燃料がケロシンであるのも同じ理由からだ。ガソリンは寒い地域だと極端に揮発性が落ち、しばしば火が消えてしまうトラブルを発生するからである。極地で植村さんが愛用したのはやはりオプチマスの大型ケロシンストーブだったらしいが、いかにも頷ける話である。タンク圧の調節も弁の開け閉めとポンピングだけというシンプルなもので、炎の調節が簡単にできる点もとても良い。
俺は渓流釣りの熱烈なファンなのだが、これまで使用したストーブの内ベストとも言えるものが、スベア123Rである。8Rも確かに小型ストーブとしては捨てがたい魅力があるのだが、大型の調理器具でも十分使用可能な点、余分なケースなしで高い収納性を持つ点、メンテナンスの容易さとよりシンプルな構造、8Rよりも若干大き目のタンク容量と火力、以上全ての点において8Rよりも抜きん出ていると俺は思うのだ。少なくともソロバックパッカー用のストーブとしては、未だにこれを凌駕するものはないというのが俺の意見である。真鍮でできた五徳兼用のケースは安っぽいという人もいるが、少なくとも8Rのケースみたいにサビが来ない分、俺は良いと思っている。そしておまけのように付いているフタ兼用のアルミカップと取っ手も、荷物を少しでも節約したいソロバックパッカーにとっては、中々重宝する代物なのである。コイツとホープのクッカーさえあれば、とりあえず俺の必要とする食器類は揃ってしまうのだ。
これまでに俺が使用してきたテントの数は軽く10を超える。しかしそれらの内最も俺の旅のスタイルに合っていたと思うものは、ダンロップ製の一人用テントである。良い点としてはフライが大きく本体を覆っているので、荷物置き場や調理用スペースとしての前室が、大きく取れる点にあった。これは現在ではもはやラインナップから消えてしまっているが、似たようなテントは現在でもこのメーカーから出されていることと思う。ダンロップテントの良い所は、ナンといっても先ず設営が簡単なところである。大抵は屋根に通した一本のポールごとフレームに引っ掛ける構造になっているので、設営は慣れれば一分もあれば済んでしまう。この設営が簡単だということは実に大切で、特に荷物を背負って移動するソロキャンパーにとっては、疲れ切った一日の終わりにすぐに休息の場所を得られることほど、ありがたいことはない。ダンロップのテントの弱点は風に弱いところだが、これはテントサイトを選ぶ時点である程度カバーしてやることができる。テントはフライやグラシに使用されている生地と本体の通気性が重要なファクターの一つであるのだが、ダンロップ製テントはこの点安心して進められるメーカーのひとつだ。
テントといえばモンベルの3人用も、以前は俺のお気に入りの一つだった。ただし俺はこれをテントとして使用したのではなく、フライシートとポールのみで自立式ツェルトとして使用していたのである。渓流も9月の声を聞くとにわかに涼しくなり、蚊などわずらわしい虫の数も激減する。そんな時、少しでも荷物を軽くしたい俺の思惑にピッタリだったのが、このテントのフライだったのである。当然フライだから防水性は高いし、内部のスペースは広々している。それに自立式だから、どこへでも簡単に移動できる利点があった。地面に防水性の高いグランドシートを敷けば、寝起きはもちろん調理も全て屋根の下でできるという訳だ。重量も軽いのでテント代わりとして重宝したが、ポールのかさばるのが難点だった。後にダンロップの一人用テントを手に入れると、そちらの方が汎用性が高かったこともあり、このテントの出番は次第になくなってしまった。
はじめてコールマンの製品を使用したのは、茶色いタンクを持った400を購入した時である。このストーブはそれまでのコールマン製品と違い、折畳式の足をタンクの底に供えたものであったが、基本的なデザインはそれまでのものと大差のないものであった。この頃標準であった通称ツーレバーの良いところは、スロットルバルブとは別に火力調節レバーが付いているので、このスライドレバーの操作のみで簡単に火力調節ができる点である。そのため火力を調整する際に誤って火を消してしまうことがない。しかし反面、バーナー下部に燃料が溜まってしまうトラブルが発生することがあり、扱いようによっては非常に危険なストーブの一つである。ウッカリするとタンクごと火達磨になってしまったりするが、火力が強いので、インスタントラーメン用のお湯沸しには重宝する。